為替変動が起こるのはなぜ? その仕組みをしっかりと理解しよう

為替変動が起こるって一体どういうこと?

「為替相場が変動する」ということは、つまり、「為替が円安か円高のどちらかに動いた(円・ドル相場の場合)」ということを意味します。

そもそも為替相場とは、外国為替市場において異なるふたつの通貨が売買される際の交換比率のことを指します。日本では、円・ドル相場が代表的ですが、そのほかにもさまざまな通貨の組み合わせによる相場が存在します。

この為替相場は、誰かが恣意的に決められるものではなく、市場における通貨の需要(買いたい量)と供給(売りたい量)のバランスで決まります。

つまり、為替変動が起こるということは、通貨のバランスが崩れたということにほかならず、円・ドル相場の場合は、円安か円高のどちらかに円の価値が偏ったということになります。

円安・円高って一体どういうこと?

円安とは、円の他通貨に対する価値(1円単位で交換できる他通貨の単位数)が相対的に少ない状態のことです。一方、円高はその逆で、円の他通貨に対する価値が相対的に多い状態のことです。

具体例を挙げましょう。

例えば、日本人がアメリカに旅行へ行き、1万円をドルに両替するとします。為替相場が1ドル=100円であれば、1万円は100ドルになります。しかし、為替相場が1ドル=80円であれば、1万円は125ドルになり、同じ1万円で25ドルも多くのドルを取得できます。これは、円の価値が高いということになり、この状態を円高といいます。

反対に、1ドル=125円であれば、1万円は80ドルになります。同じ1万円で20ドルも少ないドルしか取得できないので、円の価値が低く、円安ということになります。

為替変動の理由となる「通貨の売買」は誰が行っているの?

為替が円安か円高のどちらかに動くということは、誰かが通貨の売買を行って価値を変えているということにほかなりません。

通貨の売買を行っている人は、大きく分けて3つに分類されます。

  1. 実需筋
  2. 資本筋
  3. 投機筋

それぞれ、説明していきましょう。

実需筋ってどういう人のこと?

実需筋は、日々の実需に基づいて取引を行う市場参加者のことをいいます。

たとえば、輸入企業は、海外の輸出企業に対して現地の通貨で支払いをして、原材料や商品を購入する必要があります。また、M&Aで海外の企業を買収するケースなども、円をドルに交換する必要に迫られてのことです。

実需筋の投資傾向は、為替レートの変動によってタイミングをうかがい、投資を行うということはほとんどありません。なぜなら、多くの場合は期限などが定められており、その期限に間に合わせるように取引を行わなければならないからです。

資本筋ってどういう人のこと?

資本筋は、生損保や年金、投資信託など実際の投資需要に基づいて、マーケット(市場)に参加する投資家のことをいいます。

保険会社や金融機関、投資信託などは、投資家から預かったお金を運用して運用益を出し、返していく必要があります。その手段の1つとして為替取引が行われているのです。

資本筋の投資傾向は、過度にリスクを取れないので、予め定めれた運用方針により長期的な投資を行い、年率数%の固い利回りを目的とした運用になります。

投機筋ってどういう人のこと?

投機筋とは、レートの変動による利益の獲得を目的に売買を行っている投資家のことです。

主に短期間の売買を行う投資家を指す言葉で、スピキュレーターとも呼ばれます。

個人投資家やヘッジファンド、銀行、金融機関などは投機筋にあたります。いわゆる「投資」を行っている人々のことで、為替レートの変動を見極めながら、為替差益を最大化することを狙います。

投機筋の投資傾向は、短期売買でハイリターンを目指す傾向にあります。

為替変動が起こる理由は?

先述したように、為替の変動は通貨の需給バランスが崩れることによって発生します。需給のバランスが崩れるということは、市場参加者が何ならかの要因によって通貨を売買したということになります。

では、市場参加者はどのような要因から通貨の売買を行うのでしょうか。ざっと解説していきましょう。

金利差

そもそも国の金利とは、各国の国債金利のことです。そして、国債金利とは、国が発行する債権(借金)のことを指します。

国債は投資家も購入することができます。国の借金を買うということは、お金を国に貸してあげるということです。そして、その代わりに利息を受け取ることができます。当然、投資家としては低金利の国より、高金利の国にお金を貸した方が利息収益が増えます。

こうして、金利が高い国のほうが、どんどん通貨高になっていきます。

景気

国債金利は国の借金なので、景気に大きく左右されます。

当然、好景気になればモノが飛ぶように売れて、株価も上昇し、不動産価格も上がります。

いわば、「お金の需要が増えている」状況となり、どれだけ金利を高く設定しても、お金を借りる人は増えていきます。こうして、金利が上昇していくのです。

もちろん、その反対で、不景気になってしまえば「お金の需要が減っている」状況となりますので、金利は下がってしまいます。

要人発言

政府と中央銀行は、その国の金利として「政策金利」を定めています。

中央銀行は政府の意向に沿って、景気が良いときには政策金利を引き上げてバブルにならないように抑制し、景気が悪いときには政策金利を引き下げて銀行が企業へ融資をしやすく調整しています。

つまり、政策金利が上がるということは、景気が良くなって国債金利も上がるということです。そのため投資家は、今、その国の景気がどれだけ悪そうに見えても、政策金利が上がる兆候があれば絶対に見逃したくありません。

そこで活用するのが、要人の発言です。

アメリカであれば中央銀行のFRB議長、ユーロであれば中央銀行のECB総裁、日本であれば中央銀行の日銀総裁の発言などから、今後、政策金利が上がる可能性をほのめかす発言がないかを常にチェックしているのです。

世界的な経済ニュース

世界経済にインパクトを与える経済ニュースも大きく通貨を動かします。

最近で言えば、ジョー・バイデン氏の大統領選挙勝利などが挙げられます。こうしたニュースが、国債金利の上昇や下降のどちらに影響を及ぼすかは内容によって異なりますが、どちらか一方に大きく突き抜けていく可能性があります。

経済指標

世界各国では経済指標が定期的に発表されています。

なかでも、一番為替に影響がある経済指標は、「米・非農業部門雇用者数」です。

なぜ、GDPや景気指数ではなく、雇用者数なのかというと、アメリカの中央銀行(FRB)が政策金利を決定する材料として重視しているのが、「物価」と「雇用」だからです。

世界経済の中心であるアメリカの景気は、日本や欧州の景気にも大きな影響を及ぼします。

戦争やテロ、大規模自然災害

戦争やテロ、大規模自然災害が発生した場合、突如としてその国の経済活動が停止してしまう可能性があります。

当然、経済活動が停止すれば、大きな通貨安は避けられません。

投資家心理

投資家の心理が、実は大きく為替レートに影響します。

たとえば、前述したような戦争やテロが発生した場合、投資家は大きな通貨安を恐れて「リスクオフ」を行います。

リスクオフとは、その名の通りリスクを避けて今のうちにより安全な通貨に換えておこうという投資行動のことです。多くの場合、世界一の債権国である日本円、永世中立国であるスイスフラン、世界の基軸通貨である米ドルに通貨が集まります。

逆に、「リスクオン」では、全世界の景気が上向いており、少しばかりハイリスクでも、ハイリターンな国の通貨を持ってみようという状態になり、高金利通貨である「豪ドル」や「南アフリカランド」などに資金が集まりやすくなります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

投資を行うにあたって、為替変動をしっかりと理解することは必要不可欠なスキルです。

この記事を読んで為替が動く仕組みをしっかりと理解し、徐々に「こうした兆候があるから、今後、この通貨は上がる/下がる」ということが予測できるようにしていってください。

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