ファンダメンタルズ分析は見るべき情報が多いので、慣れないうちは苦労するかもしれませんが、中長期投資を行う上で、取引を行う通貨の国の金融政策や経済状況はとても重要になります。
そこで、この記事ではファンダメンタルズ分析について基本知識を紹介していきます。
ファンダメンタルズ分析とは?
ファンダメンタルズ分析はその国の経済データを使用して相場を予測する分析方法のことです。また、ファンダメンタルズは「経済の基礎的条件」と訳されています。
経済成長率や物価上昇率、財政支出などがこれにあた、また広義では、その経済に影響を与える可能性のある要人の発言もファンダメンタルズとして活用されます。日々、発表される経済指標と要人発言の情報収集がファンダメンタルズ分析を行う上で重要なポイントです。
株式投資の場合代表的な3つのファンダメンタル分析として株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)、株式資本利益率(ROE)などが指標として用いられます。
テクニカル分析との違い
テクニカル分析は基本的にチャートを見た上で、価格や値動きのサイクルに注目する分析手法のことです。過去の値動きを表すチャートを用いるほか、テクニカル指標と組み合わせて分析をします。
テクニカル指標には移動平均線、ボリンジャーバンド、RSI、MACDなどが例として挙げられます。
ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析、全く毛色の違う2つの分析方法ですが、それぞれにメリットデメリットがあるので、各分析手法の特徴をおさえて自分にあったスタイルを見つけるのが良いでしょう。
FXでの主なファンダメンタルズとは
実際にファンダメンタルズ分析を行う際に、見る主なデータを紹介していきます。
経済指標
まずは経済指標です。これは日々世界各国の政府や中央銀行などが発表している経済データです。このデータは多くの投資家がチェックをしているため、経済指標が発表される前後は大きな値動きを見せることもあり、最初は発表時間の把握だけでもしておくと良いでしょう。
経済指標はファンダメンタルズを表すデータの中でも最も速報性が高く、最新の状況を表しています。もちろんすぐには価格に影響を与えないものも多数ありますが、中長期では大きな意味を持つ指標もあり、その国の経済状況の本質的な価値を図るデータです。
経済指標はFX会社が提供している経済指標カレンダーを使えば無料でチェックができ、時間、指標名、前回値、予想値、結果などが記載されています。
会社によっては重要度なども記載されているため、どの指標に注目すべきなのかという点もひと目で簡単にわかるようになっているのでチェックしましょう。
生産者物価指数
世界各国のインフレ動向を測る重要な経済指標の1つです。
英語表記で「Producer Price Index」(PPI)とも表現される他、国によっては「卸売物価指数」と表現されることもあります。
総合指数といったものの他にも、製造段階別には原材料・中間財・最終財というものも含まれ、その他にも品目別、産業別など様々な分類やカテゴリが存在します。
消費者物価指数
購入に関連する消費、サービスなどの小売価格の変動を算出している経済指数です。
英語表記で「Consumer Price Index」(CPI)とも表現されています。
簡単に説明すると、今日何かを購入したと設定し、同じ物をまた別の時期に購入した時の変動などを測定する為に利用されることが多いとされています。物価の測定というわけです。
生産者物価指数「Producer Price Index」(PPI)と同じく、インフレ動向を測る重要な経済指標の1つとして重要視されている指数です。
貿易収支
ある国との輸出入による差額を示す経済指標です。
輸出額が輸入額を上回れば貿易黒字、下回れば貿易赤字と非常に分かりやすい指数でもあるように思えますが、国際通貨基金(IMF)に定められているマニュアルによって作成する必要があります。
鉱工業生産
総合的に鉱業や製造業の変動や活動を確認することができる経済指数となっており、経済産業省が毎月公表していることからも知られている指数となっています。
以下、鉱工業製品や製造工業に関する情報
・生産・出荷・在庫
・生産能力の動向
・生産の先行き2カ月の予測の把握
ちなみにこの指数は、当該月の翌月末に経済産業省から発表されるといった速さで公表される為、リアルタイムに近い状態で確認することができます。
小売売上高
以下全てのサービス業者の売上金額をまとめている経済指数です。
・コンビニ
・百貨店
・スーパー
・サービス販売、小売
商品やサービス購入にどれ位の金額を使っているのかが分かり、その国の景気などを見定めるにも利用されます。
GDP
国内総生産のことであり、英語表記では「Gross Domestic Product」(GDP)と表現されることが多い。
経済力を見定める為に利用されることが多く(ニュースでもよく聞く指数でもあります。)、ここ1年間で新しく生み出したサービスや生産物の合計となっており、経済成長率が高ければGDPの成長率は伸びていきます。
製造業PMI、サービス業PMI
「購買担当者景気指数」とも呼ばれ、英語表記では「Purchasing Manager’s Index」(PMI)と表現されます。世界でも多くの国でも調査を行っていることからも注目されている指数です。
PMIは購買担当者に購買数量から、新規受注、受注残、雇用などをアンケート調査した後に指数化したものとされています。
景気動向を占うことでも利用される指数(GDPなど)でもありながら、GDPよりも公表が早い為、マーケットでも注目している方も多い。
金融政策
投資を行う先の通貨の金融政策は、経済指標に並んで非常に重要なポイントになります。金融政策とは、政策金利の動向や緩和引き締めのポリシーなどが挙げられます。
相場分析を行う上でも重要ですが、スワップポイントを意識して取引を行っている投資家にとっては金融政策次第でスワップポイントが大きく異なるため、特に注目されるほか、金融政策に関してはほかのファンダメンタルズ分析に比べて難易度も高いということも頭に入れておきましょう。
要人発言
要人発言も経済指標と並んで速報性の高いデータとしてファンダメンタルズ分析の中では比較的に値動きを見せやすいです。ここでいう要人とは各国政府や各国中央銀行の主要ポストに就いていて、金融政策や財政政策に大きな影響を与える人を指します。ただ要人発言もその発言内容から今後の経済状況や政策指針を読み取り、相場に与える影響を考えなければならないので、ほかのファンダメンタルズ分析に比べてやや難易度は高いと言えるでしょう。
地政学的リスク
地政学リスクとは紛争や諸国間でのトラブルのことを指します。トラブルを抱えている国や地域は経済的に不安定とみなされます。
長年の問題として特定の地域に存在しているケースが多いので、取引を行う通貨の国がどのような地政学リスクを抱えているのか、また可能ならその理由や背景を取引前に確認しておくのがお勧めです。
ファンダメンタルズ分析の方法
それでは、ファンダメンタルズ分析の実際のやり方を見ていきましょう。データを収集した上でそのデータをどう取引に活かしていくべきか見ていきます。
まず、やるべきこととして重要度の高い経済指標をチェックします。始めは経済指標の数も多く何がどういった意味を持っているのかわからないことがほとんどだと思います。そんなとき、FX会社の経済指標カレンダーに記載のある重要度を参考にどの指標が注目されているのかをチェックします。
次にやるべきは経済指標以外のファンダメンタルズの情報収集です。発表時間の決まっている経済指標と異なり、多くのファンダメンタルズは突発的なヘッドラインとして飛び出してくることが多いです。そのうえで、適切な情報収集の方法を紹介します。
情報収集の方法に正解はなく、ネットだけでなくテレビや新聞といったオールドメディアからでも情報収集は可能です。テレビや新聞では政治や経済の情報は満遍なく仕入れることができます。
また、一次情報ではなく人の手を介して比較的わかりやすく情報が発信されていることが多いのでおすすめの方法です。
これらの経済指標の動向と中央銀行関係者からのコメントを照らし合わせながら中央銀行の動向を探っていくのが定番の方法です。
ファンダメンタルズ分析を行うときの注意点
ファンダメンタルズ分析は見るべき情報も多い一方で相場の方向性を形作る非常に重要な分析というのは理解できたかと思います。しかし、そんなファンダメンタルズ分析にも注意点があります。
短期的なトレードの分析には向かない
ファンダメンタルズ分析は経済状況を踏まえたうえでの分析です。もちろん経済指標や要人発言などその場でマーケットがセンシティブに反応する要因もありますが、ほとんどが中長期的な相場を形作る要素となります。
そのため、ファンダメンタルズ分析は中長期的な取引に向いており、短期的なトレードには適していない場合があります。
一般的には短期的なトレードを行う際にはテクニカル分析と組合せて適切な取引戦略をとる必要があるでしょう。
為替相場にあまり影響が出ないケースもある
ファンダメンタルズ分析を行う上では材料豊富のように思えますが、為替相場に直接的な影響を与える材料はそのごく一部しかありません。
どの経済指標や発言が動くのかを推察するには過去のデータを見る必要があります。それでも注目度は高いが、事前報道等で相場が織り込んでしまっている場合やデータが古い場合など、過去のデータを盲信するのも危険です。
ただ、「バタフライ効果」という言葉があるように、短期的には注目されていないような材料でも長期的には大きなトレンドを形成するなど影響を及ぼす可能性のある材料も多々あるため、適切な知識を身につけて材料を取捨選択することが大切です。
予測に希望的観測を織り交ぜない
ファンダメンタルズ分析はテクニカル分析に比べ、難易度が高いのは目に見える定量的な判断基準や売買タイミングを図るシグナルがなく、自分で分析を行わなければならないことにあります。
分析を行う際の判断基準や考え方の指針を自分の中で持っておくと客観的かつ効率的な分析をできるようになります。
まとめ
まずは、経済指標カレンダーを毎日チェックし、重要度が高い経済指標が発表される時間にチャートを見ましょう。すると、どの経済指標が為替レートに影響を与えるか、少しずつわかってきます。
情報収集とどのような影響があるのかをしっかりとチェックする、これを繰り返していけば自ずと分析力が高くなるでしょう。