一目均衡表とは?5本の線と雲から相場の動きを見極める方法

一目均衡表は一風変わった日本発のテクニカル分析のひとつです。5つの線と「雲」をローソク足と組合せて分析します。他のテクニカル分析に比べ構成要素が多いため難しく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえればとてもシンプルなテクニカル分析手法です。世界中の多くの投資家から支持されている一目均衡表について、基礎知識から相場動向を予測するための活用方法まで詳しく説明します

一目均衡表の基礎知識

一目均衡表とはどのようなテクニカル分析なのか、初めての方でもわかるように基礎知識から解説しましょう。

▼一目均衡表とは

一目均衡表は、1936年に細田悟一(ペンネーム:一目山人、いちもくさんじん)が考案したとされている日本を代表するチャート分析手法です。考案者である細田氏は、独自の研究所を設立し2000人の職員と7年の年月をかけて一目均衡表を完成させたと言われています。緻密なデータに裏付けられた一目均衡表は、本来は株価を基に考案された指標ですが、FXの為替レートなどほかの銘柄にも応用することが可能です。
一目均衡表と他のテクニカル分析との大きな違いは、多くのテクニカル分析が価格の変化や相場の流れを重視して時間を二次的なものとして扱っているのに対し、一目均衡表は時間を主体として値段を二次的なものとして扱っている点です。つまり「いくら」になるかを分析するより「いつ」を分析することに特化したテクニカル指標といえます。また、一目均衡表は、買い方と売り方の均衡が崩れた方向に、相場が動くとする考えに基づいています。買いと売りの均衡が崩れた際の大きな動きを一目で把握することを目的として作られたとされ、日本人のみならず海外の投資家にも人気があるテクニカル分析です。そのように多くの人に使用されていることもあり一目均衡表の各線それぞれがレジスタンス・サポートラインとして機能する働きがあります。
なお、現在は一目仙人の遺族が経営する株式会社経済変動総研が一目均衡表の普及に努めており、一目均衡表の資料や原著の販売などを行っています。

一目均衡表を構成する5本の線

一目均衡表は転換線、基準線、2本の先行スパン、遅行スパンの5本の線から構成されています。計算式が複雑だったり、複数種類の計算値があったり、とっつきにくい面はありますが、線としてチャート上に表示されたものは見方を覚えればすぐにでも取引判断に活かすことができます。まずは、5本の線の意味と見方をマスターしていきましょう。

・基準線
基準線は、過去26日間(本)の最高値と最安値の平均を結んだ線で、相場の中期的な方向性を示します。たとえば、過去26日間の期間最高値が100円で最安値が90円だった場合は95円が基準値となり、この基準値を結んだ線が基準線となります。26という数値は一目均衡の基本数値で、原則、固定して使われます。

・転換線
転換線は過去9日間(本)の最高値と最安値の平均を結んだ線で、相場の短期的な方向性を示します。基準線と同様に、最高値と最安値を足して2で割った数値を結びます。この9という数値も基本数値のため、原則、固定して使われます。

・先行スパン
先行スパンは現在の値動きが未来にどのような影響を及ぼすのかということを2本の線(先行スパン1、先行スパン2)を使って表したものです。先行スパン1は基準線と転換線の平均値を26日先行して表示させたもので、先行スパン2は過去52日間の最高値と最安値の平均値を26日先行して表示させたものとなります。2つの線の間を塗りつぶすことで「雲」と呼ばれる帯状のエリアが浮かび上がってきます。一目均衡表の「雲」は、相場の将来予測において非常に注目されやすいポイントとなります。その活用方法は後ほど詳しく説明します。

・遅行スパン
遅行スパンは一目均衡の中で最も重要な要素と言われています。当日の終値を日々26日前に遅行させて記入します。つまり当日の価格と26日前の価格を比較しているということになります。

一目均衡表の基本的な見方

一目均衡表は、他のテクニカル分析に比べ多くの要素で構成されており、相場の状況を様々な観点から的確に分析することが可能です。ここでは、一目均衡表の具体的な活用方法を説明します。

▼時間軸の選び方

一目均衡表はどの時間軸でも使うことができますが、発案者である一目仙人は正確性を期すためには週足や分足ではなく日足でのみ使うべきと述べています。前述した基本数値の9,17,26は日足を基に算出されているためです。また、一目均衡表は補助線と呼ばれる線単体で分析する場合と、複数の線の組合せを用いて分析する場合があります。線の組合せや基本的な分析方法を見ていきましょう。

▼線の組合せと基本的な分析方法

・転換線と基準線
基準線はその向きと転換線との交差部分に注目します。基準線単体での向きは相場のトレンドを示しているとされ、上向きの場合は上昇トレンド、下向きの場合は下降トレンドという見方をします。さらに、基準線が上向きでかつローソク足が基準線の上に位置している場合は上昇トレンドの勢いが強いことを表し、逆に基準線が下向きでかつローソク足が基準線の下に位置している場合は下降トレンドの勢いが強いことを表しています。
基準線と転換線を組合せて見る場合は、その交差地点が買いもしくは売りのシグナルとなるケースが多くあります。転換線と基準線が交わる部分は、相場の転換の目安とされ、代表的なのは次の2種類です。
・転換線が基準線を上抜く:買いシグナル(ゴールデンクロス)
・転換線が基準線を下抜く:売りシグナル(デッドクロス)
移動平均線と同様の使われ方をされ、基準線と転換線がそれぞれ短期線、長期線の役割をしています。

>移動平均線のゴールデンクロス、デッドクロスについて詳しく見る

・先行スパン
先行スパンを用いて分析を行う際には、 先行スパン1と先行スパン2の間を塗りつぶしたゾーン「雲」と呼ばれる帯状のエリアとローソク足の位置関係に注目します。
ローソク足が雲の上に位置していれば強気相場、ローソク足が雲の下に位置していれば弱気相場であることを示しています。また、雲とローソク足の組合せは売買シグナルとしても活用することができます。
・ローソク足が雲を上抜けする:買いシグナル(上昇サイン)
・ローソク足が雲を下抜けする:売りシグナル(下落サイン)
そのため、ローソク足が雲の中に突入した場合は、雲を上抜けるか下抜けるかに注目が集まります。雲の厚みが厚ければ厚いほど、相場の反転は難しく、雲を上限下限として上下動するレンジになる可能性が高い傾向があります。その場合、雲が強固な上値抵抗線(抵抗帯)もしくは下値支持線(支持帯)になる傾向があり、そこを突破した場合には一気に上昇相場・下落相場になるなど相場が勢いづくことがあります。そのため、ローソク足が雲を上抜けたり下抜けたりする場合は、順張りでエントリーするのが定石となっています。

・遅行スパン
遅行スパンもローソク足との位置関係で売買シグナルとして活用することができます。
・遅行スパンがローソク足を上抜く:買いシグナル
・遅行スパンがローソク足を下抜く:売りグナル

▼一目均衡表の3つの理論

一目均衡表の分析には時間論、波動論、水準論(値幅観測論)という3つの理論があります。この3つの理論それぞれの視点から一目均衡表を見ていくことで実際の取引に活用していきます。

・時間論
時間論では時間の視点から分析を行います。一目均衡表を分析するうえで最も基礎的な重要な視点と言われています。一目均衡表では「9」「17」「26」を基本数値と呼びこれらの数値を加減して組み合わせた「33」「42」「65」「76」を複合数値と呼びます。あるポイントからこれらの日数が経過したタイミングで変化が起きやすいといった考え方です。このほかにも対等数値とよばれる数値も存在しています。

・波動論
波動論は描写されたチャートの波形のパターンから分析を行います。波動論は単純に次の3つのパターンのみです。上げだけ、下げだけの「I波動」、上げ→下げ、下げ→上げの「V波動」、上げ→下げ→上げ、下げ→上げ→下げの「N波動」。I波動とV波動が推移し繰り返し形成していき最終的にN波動となります。

・水準論
水準論は上値と下値から次の天井と底を推測・分析を行います。水準論は値幅観測論とも言われており、その目標値を計算する際に利用されます。代表的なのはE計算値・V計算値・N計算値・NT計算値の4つでこれらを使い分けて上記にあるよう次の天井と底の分析を行います。

一目均衡表を上手に活用するポイント

最後に、一目均衡表を用いたテクニカル分析の精度をさらに上げる方法をご紹介します。一目均衡表の見方、使い方をマスターした上で、実際に一目均衡表を上手に活用する際のポイントとして次の2点があります。

▼三役好転を狙う

三役好転とは次の3つの買いシグナルが揃っている状況を指します。
・転換線が基準線を上抜く
・遅行スパンがローソク足を上抜く
・ローソク足が雲を上抜く
この条件がそろった時には非常に強力な買いシグナル、となり強気相場の状態が続くことが予想され買い時といえるでしょう。また、この逆の条件がそろった際には三役逆転といい、強力な売りシグナルとなり売り時といえます。
ただ、三役好転、三役逆転のシグナルを待ってから売買してはトレンドに乗り損ねるケースもあり、3つのうち2つの条件がそろった段階でエントリーするのも選択肢のひとつです。その場合にはダマシにかからないよう注意が必要となります。

▼他のテクニカル分析と組合せる

一目均衡表は時間に主眼を置いたテクニカル分析です。トレンドの発生や売買シグナルを読み解く上で非常に強力なツールとなります。これに価格に主眼を置いた他のテクニカル分析を組合せる活用法を行うことで、値幅の概念が加わりより効率的で高度な分析が可能となります。押し目買いや戻り売りの判断材料も組合せにより確認することができます。
実際に組合せるテクニカル分析は手法によってもちろん異なってきますが、移動平均線やRCI、ボリンジャーバンド、MACDなどを組合せてトレードを行う投資家が多いです。

>そのほかの主要なテクニカル指標を確認する

まずはチャートで一目均衡表を表示させてみよう

一目均衡表は、一見難しそうに思えるかもしれません。しかし、ポイントだけ押さえれば、意外と簡単に活用できます。まずはチャート上でローソク足と一目均衡表といったテクニカルチャートを表示させてみてください。「雲」は厚いか、ローソク足は「雲」を挟んでどこに位置しているのか、今後簡単な所から一つずつ見ていきましょう。毎日見ているうちに、理解が深まり、その魅力に気づき、一目均衡表が時代を超えて世界的に人気な理由がわかるかもしれません。

>基本的なチャートの見方を確認する

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